フレーバー|日本香料工業会 - Japan Flavor and Fragrance Materials Association -

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フレーバーFLAVOR

私たちが食べ物を「おいしい」とか「おいしくない」とか感じているのは、味だけで感じているのでしょうか。
そうではありません。食べ物が本来持っている香りによっても食事を楽しんでいるのです。
たとえば、ガムにフレーバーが入っていなかったら、ゴムを噛んでいるような感じで味がなく美味しさは感じられません。炭酸飲料にフレーバーが入っていなかったら、単なる甘い砂糖水のようであまり美味しくありません。

フレーバーの目的
フレーバーの目的

OBJECTIVEフレーバーの目的

フレーバーの目的

食品に香料を添加するのは、よりおいしく食べられるようにするためです。炊き立てのご飯や温かい味噌汁の香りをおいしそうだと感じるように、香りはおいしさを構成する重要な要素だからです。
フレーバー(食品香料)の目的は、それ以外の目的―たとえば食品の色の調整や腐敗を防ぐ等―を持つことはありません。

ROLEフレーバーの役割

フレーバーは、おいしく価値のある食品を作るために、以下の役割などを果たしています。
1)「強化(着香)」
食品が本来持っている香りを強化し、香りが少ない素材に香料を付与する。
2)「補香(賦香)」
加工や流通の過程で食品素材本来の香りがなくなったり少なくなったりする場合に素材本来の香料を補う。
3)「風味矯正(マスキング)」
食品素材本来に好ましくないにおいがある場合や、加工工程で発生する加熱香や発酵臭などにより食品として適さないにおいが生じる場合にほかの香料を使用してマスキングすることがある。

FIGUREフレーバーの製品形態

フレーバーには、それぞれの食品や加工方法に適した形状が必要です。なぜなら、食品の形態は多種多様だからです。液状のものもあれば固形のものもあったり、飲料の多くは水性ですが、調理には油を使うことが多いためです。香料メーカーは、調合したフレーバーを添加する食品に適し、取り扱いが便利な製品形態にして出荷します。代表的な形態は4種類です。

水溶性香料
調合された香料ベースを含水アルコール、プロピレングリコールなどで抽出・溶解したものです。あまり加熱工程のない飲料やアイスクリームなどに用いられます。エッセンスと呼ぶこともあります。

油溶性香料
フレーバーベースを植物油などで溶解したものです。耐熱性があるので、クッキーやビスケットなどの焼菓子やキャンディーなどの加熱処理工程が必要な食品の香り付けに用いられます。

エマルジョン(乳化香料)
乳化剤や安定剤を使い、フレーバーベースを水に乳化させ微粒子状態にしたもので、香りがマイルドで保留性がよいことが特徴です。飲料ににごりを与えることもあるので、クラウディーとも呼ばれます。清涼飲料水や冷菓などに使用されます。

粉末香料
フレーバーベースをデキストリンや天然ガム質、糖、でんぷんなどの賦形剤とともに乳化させた後、噴霧乾燥させて粉末化したり乳糖などにフレーバーベースを付着させたりしたものです。賦形剤でコーティングされているので取扱いが便利で安定性もあります。粉末スープやインスタント食品のほか、チューインガムなどに利用されます。

SAFETYフレーバーの安全性

合成香料に対して安全性を危惧する人がいます。これは「合成」あるいは「化学的生成物」という言葉のニュアンスに対する懸念です。合成香料は、化学的構造の面からみると、ほとんどが天然香料物質か食品成分と同一なものです。たとえば、バニラ豆の成分としてのバニリンも木材のリグニンを原料に合成されたバニリンも、バニリンという物質としてまったく違いがありません。さまざまな果物に含まれているエステル類も、乳製品に含まれているラクトンもこれと同じことが言えます。

香料の安全性の特性
香料の安全性は、ほかの食品添加物に比較すると次の3つの特性があります。

1. 必要量を超えると不快になる…フレーバーは、食品が本来持っている風味に、加工食品を近づける(「自然の模倣」)ために使用します。さらにそのフレーバーは、過剰になると不快になって食品としての価値を失ってしまうので、その使用量は自ずと制限(selflimiting)されます。

2. ほとんどの成分は天然食品に含まれている…食品自体に化学構造が同じ香り物質が含まれており(常在成分)、ほとんどの場合その量は香料として添加される量よりも多く、また添加される香料の成分も天然香料であるか、食品の常在成分です。

3. 使用濃度が低い…本来食品に含まれている香り成分が微量であるために、食品の加工に利用される香料も低くてすみます。ほとんどの食品でその使用量は10ppm以下で、1ppm以下の濃度でも十分な効果を発揮するものがあります。

食品香料の表示
食品衛生法は、食品の品質管理と消費者に情報を提供するために賞味期限や添加されている物質などを、原則として、表示しなければならないと定めています。しかし、使用量も百万分の1桁台と極めて少なく、微量な成分を数十種類も調合してつくられているフレーバーは、配合した物質名をすべて表示するとかえってわかりにくいことから、一括して香料とだけ表示されます。一括表示できる添加物は、香料以外に食品のなかに含まれている成分で構成されている調味料や通常は飲み下さないガムベースなど合計14種類です。

食品添加物の安全性を確認する各種試験とADI
食品添加物は、「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」で定められた試験で安全性が確認されることが必要です。安全性を確認するための標準的な試験には、一般毒性試験のほかに、繁殖試験や催奇形性試験、発がん性試験、抗原性試験、変異原性試験などの特殊毒性試験などがあります。
各種毒性試験の結果から、当該物質の投与によって有害作用が観察されない最大投与量を判定し、実験動物の体重1kg当たりの摂取量(mg)で表される無作用量(最大無毒性量)が決まります。
次に、ヒトと実験動物の違いやヒト同士の個体的な違いを考慮して100分の1を乗じた「毎日摂取しても健康を損なうおそれのない一日許容摂取量(ADI)」を設定します。厚生労働省の調査研究で、市販の加工食品に実際に含まれている食品添加物の量は基準値を大幅に下回り、ADIを十分に下回っていることがわかっています。

フレーバーに関する国際機関

HEALTH食品香料リスト

食品用香料化合物は、食品衛生法施行規則 別表第一で指定され、着香を目的として使用される食品添加物です。
香料化合物には「バニリン」など化合物名で指定されている香料と、「エステル類」など類又は誘導体として指定されている18項目の香料があります。

化合物名で指定されている香料
2003年末までの指定品目
2004年以降に指定された品目(いわゆる新規指定品目)

類又は誘導体として指定されている18項目の香料(いわゆる18類)

イソチオシアネート類 インドール及びその誘導体 エーテル類
エステル類 ケトン類 脂肪酸類
脂肪族高級アルコール類 脂肪族高級アルデヒド類 脂肪族高級炭化水素類
チオエーテル類 チオール類 テルペン系炭化水素類
フェノールエーテル類 フェノール類 フルフラール及びその誘導体
芳香族アルコール類 芳香族アルデヒド類 ラクトン類

厚生労働省により18類の分類に該当すると判断された具体的品目

(通知:令和4年12月27日薬生食基発1227第1号・薬生食監発1227第1号)  *厚生労働省へのリンク

注意
具体的品目のリストに掲載されていないことは「類又は誘導体として指定されている18項目」に該当しないことを意味するものではありません。同リストに掲載されていない香料化合物の類または誘導体の確認については、下記の様式で最寄りの保健所等にご照会下さい。

香料化合物の類に係わる照会様式(エクセルファイル)
香料化合物の類に係わる照会様式(記入例)

*「類又は誘導体として指定されている18項目」に該当する場合であっても、「香料としての使用において安全性に懸念が無いこと」を担保するのは事業者の責任になります。

[更新履歴]2014年2月26日改稿

COMPOUND食品香料化合物 参考規格集

日本香料工業会 食品香料化合物 参考規格集の公開にあたってここに公開する規格は、日本香料工業会が会員へ実施した「現在日本で流通している食品香料化合物規格」についてのアンケート調査結果を、整理検討の上参考規格として取りまとめたもので、決して規制を目的とするような性格の規格ではありません。

公開しました規格はJECFA、FCC規格との整合性にも配慮をいたしましたが、国内流通品の規格実態を出来るだけ包含することを優先させる考え方で作成しております。従いまして、公開化合物の中にはJECFA、FCCといった他の規格集との差異がある化合物もあります。また、国内においては本参考規格と異なった規格値で流通している製品もあることも予めお断りしておきます。

この規格集が、一般消費者、香料研究開発者、香料化合物取引業者等幅広い分野の方々にご利用頂けることを願っています。
なお、日本香料工業会では本規格の修正、追加を継続的に行なってゆく予定です。
公開規格に関するお問い合わせ、ご意見、その他の情報等がありましたら日本香料工業会までご連絡ください。

食品香料化合物参考規格集 (Internet Explorer推奨)
確認試験の参照文献番号

HYGIENE食品衛生法と香料

ここで、食品衛生法と香料について触れてみます。また、あわせて新規指定香料についても述べます。 食品衛生法は昭和22年12月に公布され、翌23年7月に施行規則が公示され実質的な食品添加物の指定制度が始まりました。このとき、香料は、「合成著香料」という種別に入り、ふたつの単品香料を含めた12の「類別」に指定されています。その後何度かの改正を受けて、「分離指定」として単品香料が繁用香料として類指定から取り出され78品目が指定されました。また、類指定も18になりました。

その後、諸外国とわが国との添加物指定の違いから軋轢や事件などを通して、国際汎用添加物の指定(香料54品目、香料以外46品目)へ国の方針が転換されます。国際的な整合性を図るために「国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている未指定添加物の指定についての考え方」を示し、業者等による指定の要請を待つことなく積極的に安全性評価を行い、指定する方向で検討していくことになります。香料も平成16年10月に「国際的に安全性が確認され、かつ汎用されている香料の取り扱いについて」が公表され、これに基づき安全性評価が進められ、下記のように次々に指定を受けています。(ここまでは「二十世紀食品添加物史」を参照させていただきました。)

新規指定香料に係る情報

新規指定香料に係わる情報として新規指定香料の概要、食品安全委員会審議結果、規格基準等について提示しています。



新規指定香料に係る情報


これまで指定を受けた添加物である香料を構造別に分けた表が以下のものです。化合物により官能基がいくつもある場合は、複数、表に登場するものがあります。また、類指定のものは、類名に代表される区分にいれてあります。なお、国税庁の揮発油税基本通達によりますと、高級アルコール、高級アルデヒドとはそれぞれ、1分子を構成する炭素の原子の数が6個以上のアルコール、アルデヒドをいうと定義しています。また、複素環とは、1つ以上のヘテロ原子を含む環状化合物をさします。

国際汎用香料の指定では、1分子を構成する炭素原子の数が5個以下のアルコールやアルデヒドが、さらには窒素原子を含むアミンや複素環化合物であるピラジン化合物、キノキサリン化合物などが指定を受けています。

<指定添加物(香料)の構造別分類表>



構造式分類 H16.12月以前の指定香料 新規指定香料(H22.12.13現在)
炭化水素 脂肪族高級炭化水素類、テルペン系炭化水素類
アルコール、フェノール 脂肪族高級アルコール類、フェノール類、芳香族アルコール、イソオイゲノール、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、シトロネロール、シンナミルアルコール、デカノール、テルピネオール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ベンジルアルコール、マルトール、d-ボルネオール、dl-メントール、l-メントール、リナロオール アミルアルコール、イソアミルアルコール、イソブタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノール、2-ペンタノール、2-メチルブタノール、3-メチル-2-ブタノール
エーテル エーテル類、フェノールエーテル類、アニスアルデヒド、イソオイゲノール、エチルバニリン、オイゲノール、1,8-シネオール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール
アルデヒド 脂肪族高級アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、アニスアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、オクタナール、シトラール、シトロネラール、シンナムアルデヒド、デカナール、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、ピペロナール、ペリラアルデヒド、ベンズアルデヒド アセトアルデヒド、イソバレルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド
ケトン ケトン類、アセトフェノン、イオノン、パラメチルアセトフェノン、マルトール、メチルβ-ナフチルケトン
エステル エステル類、アセト酢酸エチル、アントラニル酸メチル、イソ吉草酸エチル、オクタン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、桂皮酸エチル、桂皮酸メチル、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルペニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l-メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、デカン酸エチル、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、N-メチルアントラニル酸メチル、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル
カルボン酸 脂肪酸類、桂皮酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、酪酸
ラクトン ラクトン類、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン
アミン アントラニル酸メチル、N-メチルアントラニル酸メチル イソペンチルアミン、フェネチルアミン、ブチルアミン、ピペリジン、ピロリジン
複素環 インドール及びその誘導体、フルフラール及びその誘導体、1,8-シネオール、ピペロナール、マルトール 2-エチル-3,5-ジメチルピラジン及び2-エチル-3,6-ジメチルピラジンの混合物、2-エチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、5-メチルキノキサリン、6-メチルキノリン、2-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン
含窒素、含流化合物 チオール類、チオエーテル類、イソチオシアネート類、イソチオシアン酸アリル


(新規指定香料については平成22年12月13日現在のものです。)
*この項は、平成22年12月13日に改稿しました。